静かな時を感じる「山崎家庭園・茶室」秋の特別公開 ~中野に残る江戸の風景を訪ねて~【まるっと中野】
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更新日:2026年10月9日
こんにちは。中野区に集う人たちの心の声を集めている、ナカノ観光レポーターの「中野区のこころペン」です。
暑かった東京の夏も終わり、長雨を経て、ようやく秋の気配が感じられるようになりました。今回は、そんな季節に訪れたい、中野に古くから残る特別な場所をご紹介します。
江古田にある「中野区立歴史民俗資料館」で、春と秋に期間限定で行っている「山崎家庭園・茶室」の特別公開が今年も10月1日に始まりました。みなさんが訪れるきっかけになればと、一足早く公開前に訪ね、副責任者の森本美穂さんにご案内頂きました。その魅力を詳しくお伝えします。
江戸時代から伝わる佇まいに溶け込み、深い緑と厳かな風に触れてみませんか。

まず「山崎家」は、江戸時代から続く旧家で、農業のかたわら質屋を営み、醤油醸造業にも進出。江古田村の名主などを務め、江戸近郊でも有力な家だったといいます。その後、八代目当主の山崎喜作氏から土地と資料が中野区に寄贈され、1989年、今の場所に歴史民俗資料館が開館しました。
資料館に隣接する敷地には、庭園があり、椎の巨木や石造物が残っています。また天保12年(1841年)に建てられた書院・茶室も伝えられています。

庭園を入ってすぐ左、まず目を引くのが大きな椎の木でした。樹齢約500年ともいわれる「スダジイ」は、中野区指定の記念物としても大切にされています。地元の人々に「醤油屋(しょいや)の椎の木」と呼ばれ、長く親しまれてきたといいます。
この椎の木には、さらに興味深い物語があります。江戸時代末期の1868年、旧幕府軍の彰義隊と新政府軍が戦った上野戦争。敗れた「彰義隊」の一隊が立ち寄り、この木の下で休息したと伝えられています。
「500歳ともいわれる椎の木の下で、150年以上前に戦いに敗れた人々が傷を癒やしていた」――そう思うと、この場所では「時が流れている」のに、同時に「時が止まっている」ようにも感じます。現代の住宅街の中にありながら、ここだけ別の時間が流れているような、不思議な感覚だと森本さんは言います。

取材中、木の実が山崎家の屋根の上に落ちてきて弾んだ後、パラパラと音を立てて地面に落下してきました。椎の木の実でした。跳ねる音がなんとも楽しいのですが、落ちてくる実が頭に当たると、意外と痛いそうで、少しご注意をお願いします。


そして、庭園に面して建つのが書院と茶室です。天保12年(1841年)の建築とされ、幕府の役人が訪れた際に立ち寄ったとも伝えられています。向かって左側の茶室では畳の一部を切って炉を作るスタイルではなく、畳の上に「風炉(ふろ)」を置いて湯を沸かしていたそうです。
書院は座敷と次の間で作られています。飾られた照明はもちろん現代の明かりですが、室内は、ぽわっと溶け込むような温かな光に照らされ、かつてここに集った人たちの面影が感じられるようでした。


庭に目を戻すと、いくつもの石灯籠などの石造物も配置されています。もともとこの場所にあったものだけでなく、他所から移されてきたものもあるそうです。それらが長い年月を経て庭に溶け込み、厳かな日本庭園ならではの趣をつくっています。
その一角にあるのが「寒山拾得」の像です。寒山と拾得は、中国・唐代の伝説上の僧とされ、日本の文学や美術にもたびたび登場します。この庭との直接的な由来は分かりませんが、長い年月を経た庭の風景の中に佇む姿には、どこかしっくりくるものがあります。
庭の維持には、日ごろから植栽業者による手入れに加え、シルバー人材センターの方々による定期的な清掃など、多くの人の手がかかっています。そして公開期間中は、森本さんはじめ、スタッフの方が、雨戸と木枠のガラス戸を開ける作業を行っています。貴重なその様子は動画でも公開されています。建物の中から庭を眺める景観もじっくりと堪能できます。
(
https://www.youtube.com/watch?v=fqa7lMXMImk(外部サイト))
樹齢500年の木も、江戸時代から続く庭も、「残っている」だけではなく、今の人々が手を入れることで次の時代へ受け継がれていました。
森本さんが、この庭の魅力として挙げていたのが「東京都内とは思えない豊かな緑」。まさにその言葉どおり、ここでは時間の流れをゆったりと感じることができます。

秋といえば紅葉のイメージですが、森本さんによると、例年、10月の公開期間中には紅葉が大きく進むことはなさそうだということです。それでも、公開時期を終えたあと、資料館のロビーからも庭を眺めることができます。季節が進めば木々の色が変わり、さらに冬には雪化粧をした庭を楽しめることもあるといいます。
中野の歴史を「展示室の中」で学ぶだけでなく、実際にその歴史が刻まれた場所に立ってみる。椎の実が落ちる音を聞き、木を見上げ、書院や茶室を眺める。そんな小さな体験から、江戸から現在まで続く時間の長さに思いを馳せ、山崎家庭園の魅力を体感できるのではないでしょうか。
この秋、中野で少しだけ日常を離れて、樹齢500年の椎の木が見つめてきた「時間」に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
【特別公開】「山崎家庭園・茶室」の公開(秋)
※2026年秋の特別公開は10月1日(木)~11月3日(火・祝)、9時~16時、無料。月曜・第3日曜休み、雨天・荒天時は中止です。書院・茶室は庭園からの観覧となります。
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/bunka/manabu/rekishiminzoku/kouza/rekimin_teienn_aut.html
中野区立歴史民俗資料館
郵便番号 165-0022
所在地 中野区江古田四丁目3番4号
電話番号 03-3319-9221
休館日 月曜日、第3日曜日、年末年始
開館時間 午前9時から午後5時まで(入館は午後4時半まで)
※「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」です。
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このページは区民部 文化振興・多文化共生推進課が担当しています。
