放射線・放射能・放射性物質ってどんなものですか

ページID:110190785

更新日:2024年4月3日

  • 放射線とは、「物質に電離を起こす力」や「物質を通り抜ける力」をもった、粒子や電磁波です。
  • 放射能とは、放射線を出す能力です。
  • 放射性物質(放射性同位元素)とは、放射能をもち、放射線を出している物質です。
    放射性物質は、時間とともに放射線を出して、違う物質に変化していきます。
    変化した物質が放射能をもたなければ、放射線は出ません。
  • 放射線・放射能・放射性物質は、医学分野、農・水産業分野、理工学分野など、多くの分野で利用されています。

参考

  • 放射線は「種類」「エネルギー」「どんな物質にあたるか」によって、物質と様々な反応を起こします。
  • この反応を利用して放射線量を測定しますが、どの反応を利用するかによって、測定する方法や測定する量や単位は、様々なものがあります(=1つの測定器で、全ての放射線をうまく測定することはできない)。
  • 個人で測定する場合の注意については、放射線・放射能を測定するにお進みください。

大気中の放射線量(グレイ単位)

  • 大気中の放射線量とは、空気に対する吸収線量(正確には「空気中カーマ」)のことです。
  • 国の総合モニタリング計画に基づき、東京都では新宿区、江東区、大田区、足立区、江戸川区、八王子市、調布市、小平市の8か所において、大気中の放射線量を24時間連続して測定しています。

環境中の放射能量(ベクレル単位)

  • 東京都は、国の総合モニタリング計画に基づき、大気中の放射線量や、水道水・降下物・土壌・農畜産物に含まれる放射性物質の放射能量を、測定しています。

参考

おもな単位

  • 1キログラムの物質に、1ジュールの放射線エネルギーが吸収された場合、その物質への吸収線量を1グレイ(Gy)と表わします。
  • その放射線の透過力が強い場合、物質を電離させる(=物質に吸収される)エネルギーは小さくなり、物質を透過する(=物質に吸収されない)エネルギーが大きくなります。
  • 当たる物質によって電離・透過が異なるため、さまざまな吸収線量が定義できます。
  • 放射線による人への確定的影響を評価する場合には、人の組織の吸収線量を使います。
  • 電磁波としての放射線自体のエネルギー(=電子ボルト単位)も定義されていますが、人への影響を考える上では、組織を透過したエネルギーは関係ありません。
    また、同じ吸収線量でも、「放射線のエネルギーや種類」「どの臓器・組織に吸収されたか」によって、確率的影響の発生率は異なります。
    そこで、確率的影響の防護の指標として定義されたのが「実効線量」です。
  • 実効線量は、標準人の各組織・臓器の「等価線量(=その組織・臓器の平均吸収線量に放射線荷重係数をかけた線量)」に、「組織荷重係数」をかけた線量を、すべての組織・臓器について足し合わせた線量です。
  • ただし、等価線量が実測できないので、実効線量も実測できません。
  • 実測できる線量として「1センチメートル線量当量」「70マイクロメートル線量当量」があります。
  • 実効線量も、等価線量も、線量当量も、単位はすべてシーベルトです。
  • 組織の等価線量は、組織荷重係数をかければ、実効線量と比較できます。
  • また、同一の放射線に対しては、1センチメートル線量当量のほうが実効線量より大きいので、個人の被ばくを1センチメートル線量当量で評価すれば「安全側(=過大評価=実際のリスクはもっと低い)」となります。
  • なお、線量当量は「場所にかかわる」ものと「個人にかかわる」ものとがあり、日本工業規格(JIS Z 4511)では、空間線量を測る目的の測定器と、個人被ばく線量を測る目的の測定器とで、異なった線量当量への換算係数を規定しています。

参考

  • ある放射性物質が、1秒間に原子レベルで1個違う物質に変化するとき(このとき出る放射線の数やエネルギーは、放射性物質の種類によりさまざま)、もとの放射性物質の放射能量を1ベクレルと表わします。
  • 同じ放射能量でも、放射性物質によって、出る放射線や半減期、蓄積しやすい臓器・組織が異なるため、被ばく線量(実効線量)は異なります。
  • 日本の法令は、放射線従事者の内部被ばくの評価には、放射性物質の摂取量(ベクレル単位)から実効線量(シーベルト単位)を計算するとして、換算係数を規定しています。

参考

  • 放射線はエネルギーの範囲がとても大きいため、単位には倍数をあらわす接頭語がよくつきます。
SI接頭語
記号読み倍数
Eエクサ100京倍(10の18乗)
Pペタ1000兆倍(10の15乗)
Tテラ1兆倍(10の12乗)
Gギガ10億倍(10の9乗)
Mメガ100万倍(10の6乗)
kキロ1000倍(10の3乗)
hヘクト100倍(10の2乗)
daデカ10倍
dデシ10分の1
cセンチ100分の1(10のマイナス2乗)
mミリ1000分の1(10のマイナス3乗)
μマイクロ100万分の1(10のマイナス6乗)
nナノ10億分の1(10のマイナス9乗)
pピコ1兆分の1(10のマイナス12乗)

f

フェムト1000兆分の1(10のマイナス15乗)

参考

  • ICRPは、実効線量を算出するため、人体を、14の組織と残りのすべての組織にわけて、組織荷重係数を定義しました。
    これら15の組織荷重係数をすべて足すと、1になります。
組織荷重係数
組織係数
赤色骨髄、結腸、肺、胃、乳房0.12
生殖腺0.08
膀胱、食道、肝臓、甲状腺0.04
骨(表面)、脳、唾液腺、皮膚0.01
残りのすべての組織0.12

参考

  • 放射性物質は地球が誕生したときから存在しており、現在も、宇宙や地球の空気・地面・食べ物だけでなく、私たちの身体の中にも存在しています。
  • 私たちは、宇宙や地面など身体の外にある放射性物質から出る放射線によって、外部被ばくしています。
    宇宙からの自然放射線量は、緯度・高度で変わります。
    地面からの自然放射線量は、地質で変わります。
  • 原子力災害などにより屋外に放射性物質が多い場合、建物による遮へいによって、屋内の放射線量は屋外より低くなります。
    しかし、屋外の放射性物質が少なく自然放射線のレベルの場合、屋内の放射線量は建材に含まれる自然放射性物質の量で決まるので、コンクリート・レンガ・石材などで造られた建物では、一般に屋外より屋内の放射線量の方が高くなります。
  • そして、放射性物質を含んだ食べ物を食べたり、放射性物質を含んだ空気を吸ったりして、身体の中にとりこまれた放射性物質から出る放射線によって、内部被ばくしています。
    室内の空気に含まれる放射性物質量は、建材や気密性で変わります。
    体内の放射能量は、どのような食べ物をどれくらい食べるかによって変わります。
  • したがって、自然放射線による被ばく線量は、地域や人によって異なります。
  • また、私たちの身の回りには、自然界にある自然放射線だけでなく、人間の手で作り出された人工放射線もあり、医療にともなう放射線によって医療被ばくもしています。
  • これらの放射線による日本人1人当たりの1年間の平均被ばく線量は、外部被ばくが実効線量でおよそ0.6ミリシーベルト、内部被ばくがおよそ1.5ミリシーベルト、医療被ばくがおよそ2.6ミリシーベルトです。

参考

おもな放射性物質
名称おもな放出放射線物理的半減期蓄積臓器実効半減期

1度に体内に取り込んだ場合、内部被ばく(預託実効線量)が1ミリシーベルトになる放射能量

特徴など
水素3(トリチウム)ベータ線約12年全身

自由水型トリチウム=約10日
有機結合型トリチウム=約40日

約2,400万ベクレル

宇宙からの放射線と空気が反応して生成し、天然水素に極微量(自然水1リットルに約1ベクレル)含まれる。
水素は人体の構成元素の1つ。
核融合発電燃料として研究されている。

炭素14ベータ線5,730年全身約40日約170万ベクレル

宇宙からの放射線と空気が反応して生成し、天然炭素に微量(約0.0000000001パーセント=1兆分の1)含まれる。
炭素は人体の構成元素の1つ。
年代測定に利用される。

カリウム40

ベータ線・ガンマ線

約13億年全身約30日約16万ベクレル

天然カリウムに0.01パーセント(日常食1日分に約50ベクレル)含まれる。
カリウムは人体の必須元素の1つ。

コバルト60

ベータ線・ガンマ線

約5年全身約10日約6万ベクレル

天然生成量は少なく、原子炉・原爆実験で人工的に大量生成される。
コバルトは人体の必須元素(ビタミンB12の構成元素)の1つ。

ヨウ素131

ベータ線・ガンマ線

約8日甲状腺

乳児約5日
成人約7日

乳児約7,000ベクレル
成人約6万ベクレル

天然生成量は少なく、原子炉で人工的に大量生成される。
ヨウ素は人体の必須元素(甲状腺ホルモンの構成元素)の1つであり、甲状腺疾患の治療にも利用される。
セシウム134

ベータ線・ガンマ線

約2年全身約90日

成人約5万ベクレル

天然生成量は少なく、原子炉・原爆実験で人工的に大量生成される。

セシウム137

ベータ線・ガンマ線

約30年全身

乳児約9日
成人約90日

乳児約5万ベクレル
成人約8万ベクレル

放射線測定器の校正などに利用される。
他はセシウム134と同様。

ストロンチウム90ベータ線約30年約18年

乳児約4,000ベクレル
成人約35,000ベクレル

天然生成量は少なく、原子炉・原爆実験で人工的に大量生成される。

ラドン222アルファ線約4日

20~30分

約15万ベクレル

ラジウム226が崩壊して生成される気体。
屋内1立方メートル当たり5~25ベクレルが存在する。
湧水1キログラム当たり74ベクレル以上含まれる温泉を、放射能泉という。

ラジウム226

アルファ線・ガンマ線

1,600年約40年約450ベクレル

ウラン238(天然ウランの99パーセント)が崩壊して生成され、体内にはほぼ一定量(成人で約1ベクレル)が存在。
湧水1キログラム当たり0.37ベクレル以上含まれる温泉を、放射能泉という。

ウラン235

アルファ線・ガンマ線

約7億年

骨・腎臓

大部分は速やかに排泄

乳児約3,000ベクレル
成人約2万ベクレル

天然ウランに0.72パーセント含まれ、原子力発電燃料として利用される。
プルトニウム239

アルファ線

約2万年

骨・肝臓

大部分は速やかに排泄

乳児約200ベクレル
成人約4,000ベクレル

天然には極微量しか存在しない。

  • 1年間に1ミリシーベルトは、 日本人の自然放射線からの被ばくのおよそ半分で、 平常時の公衆の線量限度です。
  • 水素3、炭素14、カリウム40は自然放射性物質として存在し、人は常に摂取・吸入しては排泄しているので、ほぼ一定の放射能量が体内に存在します。
  • 放射能量は、体重60キログラムの成人では、水素3が数10ベクレル、炭素14がおよそ2,500ベクレル、カリウム40がおよそ4,000ベクレルと推計されています。
  • これらによる1年間の内部被ばく線量は、水素3がおよそ0.00001ミリシーベルト、炭素14がおよそ0.01ミリシーベルト、カリウム40がおよそ0.2ミリシーベルトです。
  • なお、体重60キログラムの成人が、セシウム137を1日およそ170ベクレルずつ毎日摂取し続けると、体内の放射能量はおよそ2年でおよそ24,000ベクレル(体重1キログラムあたり400ベクレル)で、ほぼ一定になります。
    そして、このときの1年間の内部被ばく線量が、およそ1ミリシーベルトです。
  • 因みに現在日本では、食材1キログラムあたり100ベクレルを超える食品は流通していません(放射能量の基準値)。

参考

関連情報

お問い合わせ

このページは健康福祉部 保健予防課(中野区保健所)が担当しています。

本文ここまで

サブナビゲーションここから